the counter pop’s blog

ロックバンド ザ・カウンター・ポップのブログです!

84. 「天国 退屈 欲望」 ソニア





 夕刻


 タンクローリー


 炎上


 轟音とともに
激しく火柱があがった


 燃え上がる
ガソリンスタンドを中心に
付近のビル群の壁に
オレンジ色の
フラッシュライトが映る
 恐怖と不安で
立ち尽くす通行人の
顔面も目にも口の中にもの
鮮烈なオレンジが
映り込み
その瞬間だけ
街をオレンジと黒の2色で
コントラストさせる


 俺は人混みの中で
ナミコの待つ
コンビニを見た


 ナミコは?


 ナミコのいた
コンビニの外ガラスが
街頭に突如として現れた
巨大なオーロラビジョンになって
通りの反対側で爆発する
ガソリンスタンドを映し出す


 ナミコは何処だ?


 俺は混乱の中で
逃げ惑う人々を掻き分けて
ナミコを探した
 気付くと
なんだか体が急に
半分くらに
小さくなったようだ


 恐ろしかった


 それは予想していたよりも
爆発が激しかった事もそうだし
タンクローリーの運転手
さっきまで元気に
声をあげていた
ガソリンスタンドの
アルバイトの学生
そして店主らしき
中年の男が
いつかTVで見た
スタントマンの様に
火ダルマになって
地面を転がり
回ったのもそうだし
 そしてそんな光景を見た
ナミコが
やっぱりそんな
気持ちになって
逃げ出してしまったのではないかと
不安になったからだ


 歩道で立ち竦む
俺の手を掴むものがあった
それは氷のように
冷たくて滑らかだった


 ナミコ・・・


 俺達は手を取り合って
集まる野次馬達と
逆の方向
アパートの方へ走った




 予想通り
監視は解かれているようだ
 さっき車の中から確認した
刑事らしき男達の乗ったセダンも
川沿いの向こう側の
トレンチコートの男2人もいない


「行こう」


 俺とナミコは静かに
そして手を繋いだまま
外階段をゆっくりと上った
鉄板を溶接しただけの
簡単なステップが
上るたびに
カツン・・・
カツン・・・と
空虚な音をたて
俺達を歓迎してくれる


「さぁおいで」


 俺はナミコの手を
少し強く引いた


ナミコの俺を掴むその手に
力が入る・・・



                       つづく




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by ROCKER’S DELIGHT 2月号
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