the counter pop’s blog

ロックバンド ザ・カウンター・ポップのブログです!

77. 「天国 退屈 欲望」 カンパニュラ









 ・・・20分が
       過ぎた・・・


 レストラン前の
大きな駐車場の
背の高い4WD車の
影に身を隠す・・・
 植え込みの影に
なってはいるが
エントランスホールは見える
 風の強い日で
寒さが身に染みる
 食事を終え
胃袋を安価な欲求で満たせた
安価な微笑みの家族連れが
店を出てくるのが見える
 横を通り過ぎる時
その中の若い
俺より少しばかり年下と思われる
父親らしい男と
目が合った・・・


 恐らく俺の目は
血走っていて
寒空の下 何故か大量の汗を流し
如何にも不審に
見えたのだろう
 そしてここでナミコを待つ
永遠とも思われる
少しの時間が
混乱と焦燥感を伴い
表情となって
表れていたからだろう


 俺は心の中で
さらに激しい嫉妬を
掻き立てていた


ナミコは・・・


・・・今頃ナミコは
あの薄汚い俗の世界の人間と・・・


・・・くわえているのか?


・・・それとも


・・・肉付きのいい
あの腰の奥の
・・・赤く発達した
彼女の性器に
ぬらぬらと男の体液を
滴らせているかもしれない・・・
 そして男の個室で
息を殺して
それでも小さく
我慢できずに
熱い吐息を
彼女の
下唇の少し突き出た
いつでも程良く
艶やかで
潤んだ唇の端から
吐き出して
いるかもしれない・・・


 背中に流した汗が
外の空気に急激に冷やされ
体温を奪っていく・・・
 しかし次々にイメージされる
彼女の凌辱のヴィジョンが
さらなる発汗を俺に誘った


 俺は嫉妬で
狂いそうだった・・・
 そしてその感情を
ナミコへの歪な愛のために注いだ


 慌ただしく
人影が動き出す・・・
 間もなくして店内が
騒がしくなった・・・
 アルバイトらしい女の子が
店長らしい男に
何かを伝えているのが見える・・・
 コートを脇に抱えた
あの黒縁眼鏡の男が慌てたように
店を出て来るのが見えた・・・


 ナミコは・・・


 俺は走り出したい衝動を
押さえながら
冷静を装いつつ
早足で店に戻った・・・


・・・やはりそうだった・・・


 店内は今混乱の中で
案内係の女の子から
端を発した動揺が
・・・フロアーの店員、
・・・食事を楽しむ客達
・・・ついには厨房の
中までも・・・
 異常に張りつめた
緊張のバランスが
身を縮み込ませる程の
濃厚な空気の波となって
店内の隅々にまで
広がっている・・・
 そして混乱の原因は
ナミコだった・・・


 男性用個室から
ナミコの取り乱し
号泣している声が
聞こえてくる・・・
 近くで店長役の男が
ケイタイから
警察かあるいは本店へ
対応の確認の
電話をしているのが
聞こえる・・・
 俺は無遠慮に集まってくる
見物人をかき分け
個室に入った
・・・個室の扉は
半開きになっていて
蓋の閉じたままの
便座の脇の
濡れたタイル敷の床の上に
着衣を乱したままの姿で
座り込んで泣いている
ナミコの下半身だけが
のぞいているのが見えた・・・


 それは あの目黒川沿いの
小さなアパートで
何気なく 
あたりまえの午後に
見覚えのあった
 まだ2人の間に
互いへの疑問も不信も
一欠けらの不安も
なかった頃と
何ら変わらない同じ
若い女の子の足で
 それがかえって
昨日までとの
差異を際立たせ
誰かに鳩尾の奥を
鷲掴みにされたような・・・
後悔から来る痛みと
同時に
ついにここまで
来てしまったんだという
諦めと
そしてもう二度と元へは
戻ることが出来ないのだという
一種の奇妙な
達成感のようなもので
心の中を
一杯にした・・・


 俺は一歩一歩と
泣き崩れるナミコに近づき
半開きのままの扉を
そっと開いた・・・
 扉とともにタイルで冷やされた
冷たく重い空気が頬を突く・・・
・・・足元で ナミコは
両手で顔面を
覆うようにして押さえ
両肩を激しく揺らしながら
嗚咽を漏らしている・・・
 俺はナミコの肩に
手を掛けた


「出来なかったよ・・・
 ・・・・・
 ・・・そんな事
 出来なかったよ・・・
 ・・・ゴメン
 ・・・だからお金も
 ・・・貰え
 なかったよ・・・」


 ナミコ・・・


 俺は抜け殻みたいに
崩れ落ちたままの
ナミコの体を
力任せに抱え上げ
店を飛び出した・・・


 遠くで店長が呼んだらしい
パトカーのサイレンの音が聞こえた・・・



                       つづく




 みんな元気?
 今日から冬期休暇だよっ
 そんな訳で・・・
 新年は、第一週の週末から
 スタート・・・の予定!
 それでは それぞれの
 休暇を
 それぞれ 楽しんでくれよっ
 メリークリスマス & ハッピーニューイヤー 
 だって!




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by ROCKER’S DELIGHT 12月号
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