the counter pop’s blog

ロックバンド ザ・カウンター・ポップのブログです!

54. 「蒲田青春狂騒曲 其の4」


jul.02 pm5:53

「ねぇ サトミ? 結局この前 
 どうしたの? あの後・・・
 やっぱり あのケンジってコに
 お持ち帰りされちゃったワケ?」


 トモミが染めたばかりの髪を鏡の前で気にしている・・・
一緒に渋谷で買った細身のブーツカット
胸元の大きく開いた真っ黒のシャツ
 トモミは私よりずっーと大人っぽくって
二人でいると何時も後輩と間違われる
 もうちょっと明るい髪の色のほうが
派手目な顔立ちのトモミには似合うのに・・・
と思う


「ちょ ちょっとぉ 
 やっぱりってなぁにぃ? 」


 えーっと お皿足りるかな? 
ケンジ君達って 
いっぱい食べるのかなぁ?
お肉ってこんなに買い過ぎかなぁ?
まあ 足りないってことは
ないよねぇ って言うか 
この辺 肉高過ぎっ!! 
ウチの近所のスーパ−なら
倍はいけるね 
いちいち 霜かなんか
降っちゃってんなって言うの!! 
毎日こんなん食べて・・・


Theme Song 「青春の挫折」 / The counter pop
 http://www.mucom.net/thecounterpop/sound2/seisyunnozasetu.ram
           ※再生にはすべてreal player が必要です


「ねぇ?肉 足りるかなあ?
 もっと買う?
 この辺高いよね・・・」


「・・・いいじゃん 肉のことなんかさぁ
 アタシが出すからいいよ!!
 ・・・だからぁ あのケンジってコ 
 大丈夫なの?  大体 
 直ぐに誰とでもねぇ・・・」


「ちょっとトモミぃ!! 直ぐにって誰がぁ?
 それに 誰とでもなんて
 しません!」


 少しムカついた・・・
私の事全部知ってるみたいに


「だから この前は 
 どうしたの?
 言いたくないなら
 言わなくてもいいけどぉ」


「まあ言わないって事で 
 もう答えになっちゃってる
 けどねぇ・・・
 あーんっ・・・ 
 結構 クチ堅いんだ」


「・・・」


「ふぅーん ほっぉんと サトミって 
 いい女になるよ
 ウチのママみたい 
 パパも言ってた
 『いいか 
   女はクチが堅いのが
   一番』  だって 
 ばかみたいっ 結局 
 男の都合が良いように
 言ってるだけじゃん
 アンタ 今年になって何人目?
 えーっと 
 南高の金髪の子に
 私立高でしょ 
 あのバイク乗ってる子は
 何っていったっけ?日サロに
 通ってる・・・
 あと あと」


「ちょっと 人の男を数えないでよ
 人聞き悪い!! 
 別に全員 カレシにしたワケじゃ
 ないんだからぁ!! !!(怒) 」


 本気で怒った訳じゃぁないけど・・・
なんか今日のトモミって変だ・・・?


「あーっ? あーあートモミ
 妬いてんだ!! でしょぉー!! 
 おかしいと思ったよ!!
 あー あー そうか 
 そういう事? 妬いてんのねぇ!!」


「ちょっ ちょっと 何言ってんの?
 心配して言ってんだよ
 アタシが妬くワケなんかないじゃん!!
 大体 男なんか
 信じてないっつうの・・・!!」


 ◇◆◇   ◇◆◇


 環8を左折し暫くすると
街並みが一変した
同じ太田区だと思えない
くらいに・・・
 整然とした大きな家々が並び 
外観を意識した豪奢な美しい庭が
それぞれの玄関先に
整えられている
 長く細い坂を下りきると
目黒川の支流に出た
タカシが サトミのメモに従い
実家の酒店の配達用と
兼用しているピックアップバンの
ウィンカーを右に鳴らした


 俺達は多分地域の有志のグループで
飼われているのであろう
錦鯉が優雅に泳ぐ緩やかな川を
上流に向かって進んだ


 さらに 川沿いの斜面を
住宅展示場でも見られない程の
大きな家々がそびえ
続いているのが見えた


 俺は両親の事を考えていた
俺が小三のころ アパートの傍に借りた
小さなアトリエで首を吊って死んだ親父は
もともと売れない画家で
晩年は小さな出版社の為に
1枚3千円の挿し絵を
描いて暮らしていた
お袋はそんな親父を
支える為に近所のスナックで
毎日明け方まで働いていた


こんな大きな家が建つ程の仕事と
親父が死ぬまで挿し絵を描き
続けたということの
一体何が違うのだろうか・・・


・・・お袋は場末の男達の為に
あと何杯の酒をつげば
良いのだろうか・・・


風が明け方の月のかけらみたいに
ぼんやりと光を放ちはじめた外灯の列を
小さくゆらしている


「なあ タカシ? トモミって子の事
良く知ってんのか? 知ってる事を
聞かせてくれないか・・・」


カーヴの手前にトモミの家の玄関へと続く
長い階段が見えた




                 
                       つづく



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BY ROCKER’S DELIGHT 7月号より
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