the counter pop’s blog

ロックバンド ザ・カウンター・ポップのブログです!

55. 「蒲田青春狂騒曲 其の5」


jul.16 pm9:27

「なぁ サトミ トモミちゃんとは 
 ながいのか?」


新しい距離感


みんなでメシを喰おうって 
誘われた時 一瞬 
気が重くなった


俺は 一度 関係した女が
互いを 自分の所有物
みたいに振る舞う
あの暗黙の空気が苦手だった


サトミは何故か それを
感じさせない女だった
彼女が美意識として 敢えて
そう振る舞っているのか
或いは
沢山のボーイフレンドと
関係していくうちに
そんな感覚がすっかり
麻痺してしまったのか・・・
もっとも彼女に沢山の
ボーイフレンドが
いたのかどうかなんて
俺の知るところではないが・・・


ただ言える事は 
そんな彼女が俺にとって
いままでいた
ガールフレンド達とは
少し違うって事だ


「うん 高校に入ってから 
 何時も一緒だったから
 今の学校って はじめ
 なんか馴染めなくって
 入学して暫くの間 
 私クラスで 浮いちゃってたんだ・・・
 ほらっ トモミって
 あんな感じだから
 目立つでしょ?
 周りがみんな
 寄っていくんだよねぇ
 そのうち 
 何でかわからないけど 
 いつも独りでいる私と
 連むようになってさぁ
 なんか気が合うんだよね・・・
 私独りっこだから 
 良くわかんないんだけど
 お姉ちゃんみたいな 感じ?」


嫌味に感じない程度の
客観的な自己分析
彼女が俺が思っていたより
少し大人の様で
なんだか嬉しかった


「あのさぁ 
 タカシに聞いたんだけど・・・」


「トモミの両親のこと?」


「うん、それもそうだけど 
 この家だって なんか
 半端じゃないって言うか・・・
 家って言うより 要塞? 
 あの門だって・・・
 普通 アソコまでするか?」


「一人目のパパが死んでから
 トモミのママ 
 家を良く空けるんだって
 トモミはもう馴れたなんて
 強がってるけど・・・
 家の事は家政婦さんが
 ほとんどしてくれるみたいだし・・・」


サトミは 
トモミの両親についての
悪い噂については
触れようとしなかった
まだ完全に 
俺に心を許して
いないのだろうか・・・
いや 自分の口から
親友についての
悪い噂が伝わるようで
気が咎めたのかもしれない
または単純に
他人についてペラペラと
喋る女じゃないって事を
示したかっただけなのかもしれない


タカシの話じゃ 
トモミのママは 今はEUの
新興メガサプライヤー総帥の情婦で
トモミの一人目の親父
つまり謎の事故死を遂げた
資産家の彼女の実父
とその事とが 何か
関係があるのではないかと
専ら噂されている


壁際の床に置かれた
間接照明が
見た事もない奇妙な葉の
観葉植物をぼんやりと
天井に映し出している


サトミの濡れたような瞳孔に
天井に映し出された
その観葉植物の影が
反射ている
俺は一瞬 
サトミの瞳孔が
白と黒の際に沿って
金環食の輝きを得たのをとらえた


コンタクトレンズ・・・?


酔いつぶれ
3番目のゲストルームで
眠っていたタカシが 
二階へと続く大きな
吹き抜けのある階段から
降りて来るのが見えた


「トモミちゃんは?」


Theme Song 「青春の挫折」 / The counter pop
 http://www.mucom.net/thecounterpop/sound2/seisyunnozasetu.ram
           ※再生にはすべてreal player が必要です


                   
                    つづく

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
BY ROCKER’S DELIGHT 7月号より
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−