the counter pop’s blog

ロックバンド ザ・カウンター・ポップのブログです!

81. 「天国 退屈 欲望」 ゼラニューム







 東京ICで降り
環八を東へ向かった
 まだ帰宅ラッシュ 
には早くとも
246は恐らく
渋滞しているだろう
 俺はこのまま 
環八を進み
目黒通りを抜ける
ルートを選んだ
 それでも交通量は
幾らか多い


 信号待ちの車列に混じる


 隣りにはボディーに
企業名の大きく書かれた
ライトバンが並ぶ


 営業車だろうか?


 荷台にコピー機
の様なものを
積んでいるのが見える
 運転席には
Yシャツの上に
作業着といった
お決まりのスタイルの
中年の男が
怠そうに
煙草を吹かしている




 何度も通った事のある
 いつも通りの
見慣れた景色があった


・・・あの日ここから
あの高級車で・・・
ここを飛び出さなかったら
と想う・・・
 人の過去というものに
”もしも” なんて
なくても
 それでも ”もしもあの時”
とやっぱり考えてしまう
 それは単純に
後悔という
意味だけではなく
自分の選択出来得た
あらゆる可能性を
振り返る
といった意味でも・・・


 ナミコは
長旅のせいだろうか
 軽自動車の
窮屈な助手席で
小さくなって眠っている・・・
・・・窓硝子に
もたれ掛かった頭の
彼女の赤みがかった頬に
髪の束がかかり
アイドリングの振動で
小刻みに揺れている・・・
・・・眠りの中で
アパートでの新しい生活の
夢を見ているのだろうか?


 窓際に置いてきた
乙女桔梗が
枯れていなければいいのに
と想う・・・
 俺は左手を伸ばし
彼女を起こさないように
親指でそっと
彼女の髪を払った


目黒通りを左折する・・・


アパートは近い・・・



                       つづく




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by ROCKER’S DELIGHT 1月号
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