the counter pop’s blog

ロックバンド ザ・カウンター・ポップのブログです!

58. 「蒲田青春狂騒曲 其の8」




Aug.6 pm10:41



Theme Song 「青春の挫折」 / The counter pop
 http://www.mucom.net/thecounterpop/sound2/seisyunnozasetu.ram
           ※再生にはすべてreal player が必要です


 マスターがカウンターの
向こうで 安っぽい
悪趣味な灰皿を
磨いている
 くわえたジタンの灰が
今にも落ちそうだ
 近頃の愛煙家と言えば
狂った健康ブーム
いや クソ健康ファシズム
とやらのお陰で
すっかりと居場所を
無くしてしまってはいるが・・・
流石にマスターは
愛すべく年期の入った
 ヘヴィースモーカー
 /チェーンスモーカー
 /ニコチン中毒
 /スモークジャンキー
 /愛煙家
らしく
喉元だけで小さく咳き込み
タンを切る所作が
心得ている


 徐に話し出したマスターの髭に
今吐き出したばかりの
ジタンの煙が まだゆっくりと
纏わりついている


「いいか KENZIE
OUTLIFEは薬じゃない
経口ゲームなんだ
網膜をスクリーンにし
直接ビジョンを投影する
 そうだな 今で言うところの
RPGみたいなものだよ
だから何の危険も 
心配ない
もし それが本物ならな・・・」


「・・・ん?
本物なら・・・とは?」


 マスターの予想外の答えに
俺は少し戸惑った
 白と蛍光ブルーの壁と
マスターの吐き出す
ジタンの煙のせいで
なんだか頭の中が
ラクラする
 マスターは
灰皿を磨く為に握っていた
イタリアン・ヴェルヴェットを
その端に置いた


「元々OUTLIFEは
無重力で眠る
宇宙飛行士の為に
NASAによって開発されたと
言われている
 つまり 無重力空間に
おいては 
体内の血流が
平均化してしまい
心地の良い夢が
見られない
 いいか? KENZIE
夢っていうのは重要で
人は眠りの中で
昼間の体験を
体系的に脳の中に
整理するのさ」


 俺は 延々と続く
受験勉強の暗記を
思い出した
・・・そういえば
暗記のあとで
グッスリ眠ると
頭の中がなんだか
スッキリとしたっけ・・・


「だからその眠りを
コントロールする
夢のかわりが
必ず必要なんだよ
それがOUTLIFEさ」


 さらにマスターが短くなった
ジタンの残り火で
新しいもう1本に
火をつけた


「OUTLIFEを経口化し
より小型にする為に
イスラエル政府の
秘密機関モサド
UFOから譲り受けた
人体実験やら
キャトルミーティングなんて
知識と技術が
盛り込まれているとか
 日本の大手ゲームメーカー
ゼカがソフト制作に
かかわる代償として
フリーメイソンと取引をして
犠牲者が○○人でだ
とか
まぁ当時は噂が色々あった」


 でも なぜ今 
OUTLIFEなんだ
それが分からん・・・


 トイレからタカシが戻ってきて
掃除のために重ねてあった
椅子をくずして腰をおとした
 右手はまだ腹の辺りを擦っている


 マスターは続ける
「KENZIE?
ジョン・C・リリィ / 「タンク」の開発者
それから ハーバード大
MAD SIENTIST
ティモシー・リアリー / 「神経政治学」なんて
知ってるか?
ブレイクは?
じゃあ ケルアックはどうだ?」


「それなら時々朝食べるけど・・・」
 後ろで腹を擦っていた
タカシが割って入った


「それはケロックだろ・・・」


「・・・もういい」


「・・・もう・・いいのか・・・」


「俺の若い頃は
LSDなんて幻覚剤が
流行ってて
若い奴らの大体が
左翼被れか
旅日記 L / エル やって
毎日のトリップを
日記にしてるなんて
バカのどっちかだったんだよ


俺がOUTLIFEを
知ったのも ちょうど
その頃だったって訳さ」


「あぁ スマンッ 
昔話はこれくらいにして
本題に戻ろう
それが『本物ならば・・・』
って事だよなぁ?」




                    つづく


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BY ROCKER’S DELIGHT 8月号より
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