the counter pop’s blog

ロックバンド ザ・カウンター・ポップのブログです!

60. 「蒲田青春狂騒曲 其の10」




Aug.20 pm7:01

 「ふーん これがねぇ・・・」
タカシが独りごちた
 店の階段を上ると 外はすっかりと日が落ち
俺達の向かう先には今夜の喧騒を予告するかの様に
自堕落なネオンが揺れている


Theme Song 「青春の挫折」 / The counter pop
 http://www.mucom.net/thecounterpop/sound2/seisyunnozasetu.ram
           ※再生にはすべてreal player が必要です


 これがOUTLIFEか・・・
米粒をひとまわり小さくしたくらい
直径にして2、3ミリといったところか
銀色に鈍く輝き
よく見ると楕円球の腹のところに
ロットナンバーがうってある

 
 「ケンジ どう思う? 
じゃあ つまり俺達が
普段やっちゃってるのは
空っぽのOUTLIFEって事? 
 って何?
ソフトの入ってない
プレステを飲んでイッちゃってる
そんな感じか? 
 それよりバッタもんだったら
超ヤベェじゃん
北朝鮮産だってよぉ・・・
知ってた?」


 マスターに言わせれば 
そういう事になる
 まず脳と瞳孔までの
神経系をオープンにする・・・
そこまではOUTLIFEが
空でも作用するはずだ
 その後で載って来るであろう
ソフトの為に・・・
 覚醒しピリピリと
興奮した神経系・・・
しかしソフトはなかなか
ローディングされない
 なぜなら それは空だから
 そこでは開いたままの
神経領域が強力に
刺激を欲するだろう
そして脳は仕方なく
視覚からの情報を
ロードされたソフトであると
都合良く間違えて
認識してしまう


 そして あの素晴らしき
興奮がやって来る


サトミとのSEX・・・
気づき・・・
時間の消失・・・
脳の中では快感が
永遠の様に繰り返される・・・
 ジャマイカのDUB音楽
のようでもあり
 ドイツテクノの
執拗に繰り返される
ディレイの様でもある
 でも俺が気になっていたのは
そんな事じゃあなかった 


なぜ 親父の事を・・・


 なぜだ?
親父と面識の無かった筈
のマスターがなぜ
親父の死の現場の詳細を
知っていたんだ?


 ついに 俺は1つの確信とともに
激しく湧き起こる怒りを
抑えることが出来なくなった


 「行こう タカシ
     ゼカだ・・・」


「待てよ ケンジ!! 
まだ全て決まった訳じゃぁ
ないんだぜ!!
だいいち 証拠は? 
ゼカの奴らに何て言うんだ?
『あなたたち 北朝鮮
 模造OUTLIFEの開発に
 手を貸しましたねぇ!!』
ってか?
それとも
『あんたたちが
 無責任に改造した
 OUTLIFEのおかげで
 毎日たくさんの若者たちが
 廃人になっているのを
 知ってますか?』
とか? 
言って? 
それでどうするんだ?
親父さんの事だって・・・
ケンジには悪いけど・・・
今さら何が出来るって言うんだ?
もう過ぎちまった事だぜ・・・
仕方ねえじゃん!
早く忘れた方が 
ケンジの為にもなるんだよ!!
なぁ!! わかるか?」


 沈黙・・・
 何処かの飼い犬が自由を求めて
吠えている
その声は諦めにも似て
ひどく俺をイライラさせる


 落ち着け・・・
どうする?
 よく考えろ!
こういう時は何だ?
何がいる・・・
銃か? 
銃だ!!
銃がいる
ホントかよ?
 俺はなんだか
エルモア・レナード
小説に登場する
小悪党にでもなったような
いい気分になった


「タカシ 銃だ!! 
拳銃買うぞ!!」


「えー?
マジかよ? 
ヤバイって!
買うってったって 
どこで?
ダイシン行って
売ってるって訳じゃ
ないんだぜぇ!! 
って何売り場だ?
わかってんのかよ?」


ワクワクする


「それじゃぁ楊さんだ!!
ニーハオの楊さん
 楊さんとこの用心棒が居るだろ!!
そいつに頼もうぜ!!」


俺達は走った
夜の風は最悪で
酔っぱらって
歯も磨かずに寝ちまった
朝の口臭みたいに
悪臭を放ち
濃厚にワキの下まで
絡みつき
発汗させ
走る俺達の体中に
まとわりついた
風の中を走る・・・
雨の中を走る・・・
泥水がシャツに撥ねる・・・
悪くない
さあ行こうぜ!
若い血を燃やそうじゃないか!


 その時 ポケットの中で
俺の携帯が鳴った
電話はトモミからだった
 なんでもカラオケボックス
アルバイトをしているサトミが
客室内で酔っぱらった
男たちに輪姦されて
殺されたという


男たちに輪姦されて
殺されたという


男たちに輪姦されて
殺されたという


 全身の筋肉が力を奪われ
俺が放心の中で
立ちつくすまでに
幾らの時間も
かからなかった


 あがった息で
後から追い付いてきた
タカシが俺に尋ねた
激しく肩を上下させながら・・・
『ダメだ もう走れない 
煙草の吸い過ぎだなぁ』とか 
なんとか・・・


「死んだんだ
タカシ・・・
サトミが死んだんだ
輪されて死んじゃっ
たってさぁ」




                    も少しつづく


 追伸
 ヨーって皆元気?
来週 俺は 赤道辺りまで遊びにいくんでもって
一週間お休みします。
 留守の間はメンバーちゃんがびしーっと
仕切ってくれるんでなーんにも心配なし!
CHANNEL JUNK見て
鼻たらしてまっとって!
それと一日一回プロモ見んのも
わすれちゃあダメね!
じゃあまた!
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BY ROCKER’S DELIGHT 8月号より
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